【医師監修】腸内環境とお肌の関係~素敵な腸内環境で 肌が綺麗に

腸内環境と肌の関係

腸内環境が悪化すると、消化吸収が悪くなる、免疫力が低下するなど、健康に様々な影響があらわれます。
健康の維持・促進の観点からも注目される腸内環境ですが、肌のトラブルにつながる場合も少なくありません。

肌荒れや肌のくすみなど、様々なトラブルの原因は、実は腸内環境にあるかもしれないのです。
腸内環境と肌の関係について見ていきましょう。

目次

腸内環境と肌の関係

腸は、栄養分の吸収や便の排出など、健康を保つ上で多きな役割を担っています。
食べた物はまず胃で消化され、小腸、大腸へ進んでいきます。

大腸では、一部のビタミンなどの栄養素と、水分が吸収され、それ以外のものは大便として体外へと排出されます。
便を作ったり、腸内環境を整えたりする役割を担っているのが腸内細菌です。
腸内細菌には主に3つの種類に分類することができます。

善玉菌

腸の中で良い働きをする菌です。
食べ物の消化吸収を促進したり、免疫力を高める働きをします。

また、乳酸や酢酸を作り出すことで、腸内環境を良好に保つ役割があります。
ビフィズス菌、フェカリス菌、アシドフィルス菌など。

悪玉菌

腸内に残ったものを腐敗させ、有害物質を放出します。
この有害物質は、便やおならの臭いの原因となってしまいます。
ウェルシュ菌、ピロリ菌など。

日和見菌

基本的に大人しい菌だが、体が弱ると腸内で悪い働きをします。
優勢な菌の味方をすることから、日和見菌と呼ばれるようになりました。
バクテロイデス、連鎖球菌など。

腸内環境が良好であれば、これらの菌のバランスも保たれ、腸は正常に機能することができます。
しかし腸内環境は、寝不足や栄養不足など、様々な原因で悪化します。

すると腸内細菌のバランスも崩れ、悪玉菌が増加し、栄養素の吸収が不十分になってしまいます。
すると、肌に十分な栄養が行き渡らなくなり、様々な肌トラブルが起こってしまうのです。

便秘が肌トラブルの大きな原因に

腸内環境の乱れによる症状として、最も多いのが便秘です。
なんと、日本人女性の2人に1人が便秘に悩んでいるとも言われています。

便秘は、便の排泄が正常に行われない状態が続くことを言います。
排泄されない便は腸内に滞留し、腐敗・発酵していきます。

滞留した便は、悪臭を放つだけでなく、悪玉菌のエサとなり、悪玉菌が増殖する原因となります。
便秘が原因となるトラブルには、肌トラブルの他にも、イライラ、肩こり・腰痛、疲労感、腹痛など、様々なものがあります。

軽く捉えられることも多い便秘ですが、体に及ぼす影響はけして小さくありません。
できるだけ早期に便秘を解消し、普段から便秘にならない生活を心がけるようにしましょう。

腸内環境の乱れが起こす肌トラブル

腸内環境の乱れによって起こる肌トラブルは、多数あります。
腸内環境が乱れ、肌が栄養不足の状態に陥ってしまうと、肌のターンオーバーが乱れてしまいます。

ターンオーバーとは、肌の奥で新しい肌細胞が生まれ、古い肌細胞が自然に剥がれ落ちる周期のことです。
ターンオーバーが乱れることで起こる肌トラブルを見ていきましょう。

肌のくすみ、ごわつき

健康な肌は、ターンオーバーによって定期的に新しい肌へと生まれ変わります。
ターンオーバーが乱れると、古い肌細胞が肌表面に残ってしまい、肌の色のくすみや、肌表面のかさつき・ごわつきが起こります。

毛穴の開き・たるみ

古い肌細胞は潤いやハリを保つ能力も低下している状態です。
肌が乾燥したり、ハリを失ったりすることは、毛穴の開きやたるみといったトラブルにつながります。

シミ

シミの原因となるメラニン色素は、紫外線を浴びることで生成されます。
肌が健康であれば、生成されたメラニン色素もターンオーバーによって排出できるため、シミができるリスク低いです。
しかし、ターンオーバーが行われず、メラニン色素が蓄積してしまうと、シミ増えたり、濃くなったりしてしまいます。

悪玉菌の働きによって起こる肌トラブルも

ニキビや吹き出物などのトラブルも、腸内環境の乱れによって起こるものの1つです。
悪玉菌が排出した有害物質は、血液に溶け込んで全身を巡ります。

有害物質には毒素が含まれており、この毒素の影響でニキビの原因菌に抵抗できなくなったり、吹き出物ができてしまったりしてしまうのです。
免疫力が低下した状態では、ニキビ・吹き出物を治すことも難しくなります。

また、ターンオーバーが乱れが加わることで、ニキビや吹き出物が跡になって残ってしまうなど、さらなるトラブルにつながる場合があります。

便秘や下痢に悩まされている人は要注意

肌のトラブルは、紫外線や乾燥などによって起こる場合もあります。
しかし、便秘や下痢などの症状がある場合は、腸内環境の乱れによる肌トラブルである可能性が高いです。

その他、スキンケアを徹底したり、薬を塗ったりしているのに肌荒れが治らないという場合も腸内環境に原因があることが考えられます。
肌や体の不調を感じている方は、腸内環境に注目してみるようにしましょう。

腸内環境を把握するためには、便の状態を確認する、腸内検査を行うなどの方法を取ることがおすすめです。

便やおならのニオイが強い時や、下痢・便秘の時は、腸内環境が乱れ、悪玉菌が優勢になっていることが考えられます。
腸内検査は内視鏡検査などが有名ですが、自宅で手軽にできる検査キットも販売されています。
必要に応じて使用してみましょう。

腸内環境の乱れには、早めの対策が必要

腸内環境が乱れた状態が長期間続くと、長い間肌トラブルにも悩まされることになってしまいます。
深刻な状態の毛穴の開きやたるみ、シミは、自分でケアすることは困難です。

また、トラブルが長期化することで、肌に跡が残ってしまう場合もあります。
人によって差はありますが、ターンオーバーは通常1か月程度で一周します。

そのため、ターンオーバーが乱れた状態が続くと、肌トラブルの解決にも長い時間を要してしまうことになるのです。
また、便秘や下痢なども、慢性化しやすい症状です。

便秘や下痢が続くことで腸内環境が乱れ、腸内環境が乱れることで便秘や下痢が悪化してしまうという悪循環をもたらします。
腸内環境を整える習慣や食事を普段から心がけることで、これらのトラブルを改善し、防ぐことができるのです。

腸内環境を整えるには

まずは、腸内環境を整える習慣について見ていきましょう。

理想的な善玉菌、悪玉菌、日和見菌の比率は、3:1:6であると言われています。

便秘や肌荒れに悩まされている方の場合、この比率が崩れ、悪玉菌が善玉菌より優勢になっていることが考えられます。
日和見菌は、3つの菌の内最も腸内に多く住んでいる菌です。

日和見菌は優勢な菌になびく性質を持っているため、悪玉菌優勢の場合は、腸内で悪い働きをしてしまいます。
そのため、善玉菌を増やすように取り組み、再び善玉菌優勢の状態にしなくてはなりません。

善玉菌は、不規則な生活を嫌います。
規則正しい生活をすることで、善玉菌が正常に働ける環境を作り、悪玉菌を減らすことができるのです。

十分な睡眠をとる

まずは睡眠時間に注意してみましょう。
睡眠は、日中の疲れを癒し、体を健康な状態に修復する役割を担っています。

肌のターンオーバーが促進されるのも、夜間の睡眠中です。
特に、眠りについてから3~4時間は「肌のゴールデンタイム」と呼ばれる時間で、成長ホルモンの活発が分泌になり、ターンオーバーも促進されます。
ゴールデンタイムの間に、いかに質の高い睡眠をとれるかが腸内環境を整えるポイントになるのです。

寝る前にスマートフォンやテレビなどの強い光を浴びると、寝付きが悪くなり、睡眠が浅くなってしまいます。
就寝前の1時間は、スマホ、テレビの画面を見るのは避けるようにしましょう。
また、就寝前のストレッチや読書は、自律神経を整えて体をリラックスさせます。
必要があれば、アロマキャンドルを焚く、リラクゼーション効果のある音楽を聞くなど、眠りの質を高める習慣を取り入れるようにしましょう。

小まめなストレス発散を心がける

日々の生活の中で、ストレスを感じることは多いかと思います。
些細なことであっても、ストレスはどんどん蓄積していき、自律神経を乱すことにつながります。

自律神経が乱れることで便秘になってしまい、便秘の状態が続いた結果腸内環境が乱れてしまうということも考えられます。
ストレスは、日常生活の中で小まめに発散するようにしましょう。

趣味に打ち込む、運動をする、大声で歌うなど、人によって様々なストレスの解消方法があります。
自分に合っていて、なおかつ日頃から取り入れやすい解消方法を見つけておきましょう。

適度な運動をする

運動不足も、腸内環境を乱す原因となってしまいます。
日中に運動をすることで、体に適度な疲労が溜まり、睡眠が深くなるという効果もあります。

また、便の排泄には腸腰筋、腹直筋など、複数の筋肉が使われています。
これらの筋肉を鍛えることで、スムーズな排泄ができるようになり、腸内環境が改善されやすくなるのです。
これらの筋肉を鍛える運動としては、腹筋運動やウォーキングがおすすめです。

特にウォーキングは自律神経を整える効果もあり、誰でも手軽に取り入れることができます。

腸内の善玉菌を増やせる食事とは

腸内環境を整える方法として、最も重要なのが食生活の改善です。
食事は腸の状態に直接影響します。
善玉菌を増やす食事を心がけ、腸内環境を整えていきましょう。

まず、善玉菌を増やす食品として代表的なのが、発酵食品です。
発酵食品には、乳酸菌、麹菌など、多数の菌が含まれています。

これらの菌には、体の代謝を促進するだけでなく、善玉菌と似た働きをしたり、悪玉菌を抑制したりする効果があります。

ヨーグルトや納豆、キムチ、漬物などの食品を普段の食事に取り入れるようにしましょう。
また、乳酸菌を効果的に摂取できるものとして乳酸菌飲料もおすすめです。

食物繊維も、腸内環境を整えるためには欠かせない成分です。
食物繊維には、水に溶ける水溶性のもの、溶けない不溶性のものの2種類があります。

水溶性食物繊維は、水を含むとゲル状になり、便を柔らかくする働きをします。
不溶性食物繊維は、腸内で膨張することにより、腸のぜん動運動を活発にします。

食物繊維は、腸内環境を整えるだけでなく、便の状態や排便に大きく影響を与えるものです。
便秘や下痢に悩んでいる方は、特に食物繊維の摂取を心がけるようにしましょう。

りんごやバナナなどの果物類、イモ類、海藻類、キャベツ、大根などの野菜類は、水溶性食物繊維を多く含んでいます。
水溶性食物繊維は善玉菌のエサにもなるため、腸内環境の改善に大きな効果があります。

ただし、食べ過ぎは下痢の原因となることもあるので、注意しましょう。

不溶性食物繊維を多く含む食材としては、オートミール、豆類、きのこ類、ごぼう、たけのこ、かぼちゃなどが挙げられます。
これらの食材を取り入れ、バランスの良い食事を心がけることが重要です。

ダイエットが腸内環境を乱す原因になることも

食事制限や糖質制限など、食事を極端に減らしたり栄養が大きく偏ったりするダイエットは、腸内環境を乱す原因となります。
食事の量が不十分であったり、栄養価が偏っていたりすると、腸を始め、体の様々な部位に不調が現われます。

肌荒れの原因にもなるので、注意するようにしましょう。
また、これらのダイエットは排泄にも大きな影響を及ぼします。

水溶性食物繊維が不足すると、便が固くなり、排泄が困難になります。
食事が少なすぎる場合は、便の量も少なくなるため、排便の回数が少なくなります。

これらの理由で便秘の状態になってしまうと、腸内環境はどんどん悪化していってしまいます。
無理なダイエットに取り組むのではなく、健康的な食事を心がけるようにしましょう。

夕食や夜食に注意

食事の内容や量だけでなく、食事をとるタイミングにも注意が必要です。
就寝の直前に夕食をとると、胃や腸の働きが活発になり、睡眠が浅くなったり、寝付きが悪くなったりする原因となってしまいます。

また、睡眠中は胃や腸はほとんど活動しません。
胃・腸に残った食べ物は胃・腸の中で腐敗し、悪臭を発生させたり、悪玉菌のエサとなったりします。
就寝前の3時間は、食事を控えるようにしましょう。

腸内環境と肌の状態には、深い関わりがあります。
肌荒れに悩んでいる方は、ぜひ腸内環境や便の状態にも注意してみてください。
健康的な生活・食事を心がけ、体の内面から整えていくことが、肌を美しくすることにもつながるのです。