【医師監修】腸内環境とアトピーの関係について

腸内環境 アトピー

肌質は人それぞれでしが、アトピー性皮膚炎は全身に発生するので悩まれる方は多いでしょう。
通常は皮膚へ直接アプローチして改善していきますが、一時的に炎症が治まっても体質改善には至らず、長期間症状に悩まれる方も珍しくありません。

しかし、最近の研究では消化管へアプローチすることで、アトピー性皮膚炎の全身炎症が改善できると分かっています。
腸内環境を整えることで本当にアトピー性皮膚炎を改善することはできるのか、腸内環境との関係性についてご紹介しましょう。

目次

アトピー性皮膚炎とは

そもそも、アトピー性皮膚炎がどんな症状か知っていますか?
ますはアトピー性皮膚炎の概要からご紹介します。

アトピー皮膚炎の症状について

皮膚に赤みができる、カサカサでかゆみが発生する、ぶつぶつの炎症ができるなどの症状があらわれる皮膚病です。
常に症状があらわれている状態ではなく、良い状態と悪い状態が慢性的に繰り返され、なかなか完治しない症状に多くの人々を悩ませています。
一時的な症状ではなく、乳幼児が2ヶ月以上、それ以外は6ヶ月以上症状が続くとアトピー性皮膚炎の可能性が考えられるでしょう。
素人で判断することは難しいので、肌に炎症があらわれた場合はすぐに皮膚科へ行くことをおすすめします。

湿疹の特徴について

アトピー性皮膚炎はかゆみと湿疹の症状が目立ちます。
湿疹があらわれやすいので額、目・口・耳まわり、わき、首、手足の関節内側に出やすく、左右対称に発症することが多いです。
赤みが強くじゅくじゅくとした炎症で、ひっかくなど傷がつくと液体が出てきます。
次第に皮がむけてささくれ状態となり、状態が長く続くとごわごわと硬く盛り上がってくるのが特徴的です。

アトピーになる原因とは

アトピーになってしまう原因は何なのでしょうか?
主な原因はアトピー素因、皮膚バリアの機能低下、環境的な要因とされています。

アトピー素因

アトピーは皮膚炎以外に気管支喘息や花粉症といったアレルギー性鼻炎・結膜炎など免疫機能に関する症状も含まれます。
免疫は体を細菌やウイルスから守る機能ですが、アトピーの人は過剰に機能が働いてしまうため、過敏反応で気管支、鼻、目、皮膚に炎症があらわれるのです。
そのような体質のことをアトピー素因と呼ばれ、家族にアトピー素因がいるとアトピーが遺伝する可能性があるとされています。

皮膚バリアの機能低下

皮膚は表皮、真皮、皮下組織で構成されており、外側の表皮膚にある皮脂膜、角質細胞、角質細胞間脂質などの角層が肌のバリア機能を果たしています。
皮膚バリアが正常な状態だと外部から物質が肌に侵入するのを防ぎ、肌内部の水分の蒸発を防いで潤いをキープすることができるのです。

しかし、皮膚バリアの機能が低下すると異物が皮膚に侵入しやすくなり、その影響でアトピーが発生しやすい体質になってしまいます。

環境的な要因

アトピー素因や皮膚のバリア機能が低下していることで発生するアトピーは体質的な要因に分類されます。
それとは別にアレルゲンやそれ以外の刺激、ストレスや疲労などの環境的な要因でアトピーが発症する場合もあるのです。

アレルゲンとはアレルギー症状が引き起こる原因の物質を指します。
例えば、卵や大豆などの食べ物や花粉、ダニ、ホコリ、動物の毛などがアレルギーの原因とされています。

また、アレルギーとは別に汗や衣類の摩擦、肌の乾燥、ひっかき傷、洗剤といった日用品、化粧品などで肌に異常が発生する場合があるのです。
衣類やひっかき傷、化粧品でも皮膚バリアの機能を低下させることがあり、それによりアトピーが起きやすくなってしまいます。

ストレスや過労、寝不足も免疫力を低下させてしまうため、アトピー症状が出やすい体質になる可能性があるのです。

このように、アトピーの原因は1つではなく様々な原因が存在します。
炎症が起きるとかゆみを伴うのでかきむしってしまう人も多いのですが、些細な刺激でバリア機能が破壊され、症状を悪化させてしまう可能性があるので危険です。
炎症は早い段階で抑えることで、アトピー発症の悪循環を減らすことができるので、皮膚へ刺激を与えることは避けて保湿を心がけましょう。

腸内環境とアトピーの関係

アトピー性皮膚炎を抑えるために肌の保湿は大切ですが、同時に腸内環境を整えることも大切と研究で判明しています。

その理由は腸の炎症と皮膚の炎症には深い関わりがあり、アトピー性皮膚炎の人は腸内フローラが乱れていたり、腸内細菌の種類が健康な腸とは異なるといった報告があがっているのです。
それでは、腸内環境とアトピーの関係性についてご紹介しましょう。

腸の炎症は食べ物で起きる

食べ物は健康や美容を支える大切なものなので、免疫細胞が敵として攻撃することは通常ではありません。
しかし、一定の条件が揃うと攻撃対象として免疫細胞が活発化し、その結果腸の炎症が発生し、さらに全身に被害を負ってしまうのです。
なぜなら、腸の周辺には体の免疫細胞や免疫系の期間が集中しているため、腸機能が低下するということは免疫機能に異常をもたらすことにつながるからです。
では、どんな条件で免疫細胞が食べ物を攻撃対象にしてしまうのでしょうか?

カンジダ菌や有害細菌が増殖

腸内環境が悪いとカンジダ菌や有害細菌が繁殖してしまいます。
カンジダ菌は特に被害のない菌ですが、増殖すると体に様々な不調をもたらしてしまうのです。

防御壁が崩れる

腸官の壁に直接食べ物が触れないように腸内フローラが防御壁となっています。
しかし、腸内フローラの乱れで防御壁が崩れてしまうと腸官に食べ物が触れてしまうため、免疫細胞が反応して攻撃してしまうのです。

消化不良

消化機能が下がると消化に必要な酵素が正常に機能しなくなります。
食べ物に含まれるたんぱく質が消化されず小腸に突入すると、免疫細胞の攻撃対象となることがあるのです。

アトピー性皮膚炎を持ち、胃が弱い場合は消化不良と深い関わりがあるかもしれません。

リーキーガット症候群(腸管壁浸漏症候群)

腸の粘膜に穴があき、排泄されるはずの有害物質が血液を通じて、体内に取り込まれてしまう症状をリーキーガット症候群と呼びます。
有害物質は細菌やウイルス、添加物などですが、未消化の食べ物も引き金となってしまうのです。

免疫機能は血液に流れる有害物質を排除しようと機能するので、アトピーが発生しやすくなります。

このように腸とアトピーは深い関わりがあるため、腸内環境を整えることは免疫機能を正常し、アトピーの原因を抑制する働きに期待できるわけです。

大人になってからアトピーになることもある

大人になってからアトピー性皮膚炎になる人が最近増えてきています。
子どもに多い印象を持っている人も多いでしょが、様々な原因によって大人でもアトピー性皮膚炎を発症してしまうことが考えられるので、大人のアトピーの発症原因について解説していきましょう。

ストレスが原因でアトピーを引き起こす

ストレス社会でもある現代でストレスを抱えずに生活している人はいないと言っても過言ではありません。

仕事やプライベートで多くのストレスを感じてしまうとアトピーを発症してしまう確率も上がるので注意が必要です。
なぜ、ストレスでアトピーが発症してしまうのかと言うと、ストレスは心臓や肝臓、腎臓や腸などの内臓に負担をかけてしまうからです。

内臓に負担をかけてしまうことで、身体の中にある老廃物が排出できなくなり毒素が身体の中に蓄積されてしまうため体のバランスが崩れてアトピーを発症してしまうのです。

また、不安や緊張、イライラなど様々な感情が芽生えてストレスを感じることで、自律神経やホルモンバランスは不安定になってしまいます。
免疫力が低下してしまう原因にもなるので、肌が敏感になりアレルギー症状が出やすくなってしまうのです。

睡眠不足や乱れた生活が原因でアトピーを引き起こす

子どもの頃は親が生活を管理してくれているので、早寝早起きなどの整った生活やバランスの取れた食生活をしているでしょうが、大人になると自分で生活を管理しなくてはいけません。

大人がアトピーを発症する原因として、不規則な生活も挙げられるので乱れた生活をしていないか見直すことが肝心です。
特に睡眠不足は体に悪影響を及ぼします。

4時間や5時間など少ない睡眠時間であると、身体に毒素が溜まりやすくなってしまうので注意が必要です。

また、食生活に関しても添加物の多い食事や野菜不足などで肌のバリア機能が失われ、アレルギーを引き起こしやすくなりアトピーを発症してしまう可能性も高まってしまうので気を付けましょう。

水道水の残留塩素とアトピー性皮膚炎との関係

アトピーは、肌への刺激を抑えることが肝心となります。
中でも残留塩素はアトピーの原因とも言われているので、その関係性について解説していきましょう。

残留塩素とは?

雑菌を殺菌するために水道水には塩素が含まれています。
塩素には酸化力があるので人体に有害な細菌を破壊し、死滅させる効果があるので、水道水を安全に使用するためには必要不可欠なものです。

ですが、塩素処理によって肝障害や腎障害を誘発するトリハロメタロンを生成する働きもあるので人体にとっては悪影響でもあります。
なので、家庭に供給される前に塩素は取り除かれるのですが、全て取り除くことはできず「残留塩素」として水道水に含まれているのです。

残留塩素が人体に及ぼす影響とは?

残留塩素がなぜアトピーの原因となるのか、理由には2種類あるので確認していきましょう。

強い酸化力が影響する

人間の体は、エネルギーを作り出す過程で「活性酸素」を生み出します。
活性酸素は酸化力が強いので、増えていくことで自分自身が持っている細胞にダメージを与えてしまうので、病気が発生する原因にもなってしまうのです。

残留塩素に関しても、活性酸素と同じように強い酸化力があります。
なので、アトピーを発症させる原因にもなり得るので浄水器を使用するなどして対策を施すことが重要です。

肌へダメージを与える

残留塩素がある水道水を飲むことでアトピーを発症したり悪化させる原因を作ることになりますが、肌に直接触れることでも悪い影響を及ぼすのです。

顔を洗ったり、シャンプーなどでシャワーを使用する人も多いでしょうが、残留塩素の濃度が高いことで肌のバリア機能の低下や角質層の水分低下を引き起こすことも考えられるので、、肌トラブルを引き起こしやすくなってしまいます。

お風呂上りに肌のかさつきが気になる人は、残留塩素による影響受けている可能性が高いので、対策を施すことが必要となるでしょう。

オメガ3系脂肪酸が与える腸への影響

「オメガ3系脂肪酸」を知っていますか?
目や脳だけではなく体全体に良い影響を与えてくれる成分として近年話題となっています。

脂肪と聞くと体に良くないと感じる人も多いでしょうが、脂質の種類によっては善玉菌に良い影響を与えることがわかっており、その脂質はオメガ3系脂肪酸となります。

そこで、オメガ3系脂肪酸が腸に与える影響について解説していきましょう。

オメガ3系脂肪酸とは?

脳の活性化に不可欠なDHAやEPA、エゴマなどに含まれるα-リノレン酸などの脂肪酸を総称してオメガ3系脂肪酸と言います。

体内で生成することはできないので、必須脂肪酸に指定され食べ物から摂取する必要があります。

オメガ3系脂肪酸が体に与える影響としては、EPAとDHAは中性脂肪低下作用があり、命の危険もある脂質性異常を抑制させる効果があるのです。
α-リノレン酸は、血圧低下作用が報告されているので血液の流れをスムーズにして体の中にある毒素や老廃物を排出し、代謝をアップさせる効果があります。

食生活の違いで腸に様々な影響を与える

食べ物を摂取すると腸を通って排出されますが、食べたものは腸内細菌の餌にもなるのです。

バランスの悪い食事や偏った食生活をしていると、腸内環境にも様々な影響を与えることが研究の結果によってわかっています。
食物繊維が豊富な野菜中心の食生活であれば善玉菌、たんぱく質や脂質の多い肉類中心の食生活であれば悪玉菌が増えることになりますが、オメガ3系脂肪酸は脂質であっても善玉菌に良い影響を与えるアッカーマンシアや乳酸菌が増えるのです。

そのため、オメガ3系脂肪酸を摂取することで腸内環境を改善させる働きがあることがわかるでしょう。

オメガ3系脂肪酸を摂取できる食べ物とは?

オメガ3系脂肪酸を摂取するためには、DHAやEPA、α-リノレン酸が含まれている食べ物から摂取することになります。
DHAやEPAであればイワシやサバなどの青魚が一般的でしょう。

それ以外でもマグロやウナギ、鮭や筋子にも含まれています。
α-リノレン酸は、アマニやエゴマから摂取することができるので、アマニなどを使用した油を料理に使用すれば効果的に補えます。

また、くるみや豆類、緑黄色野菜からでも摂取が可能です。
ただし、酸化しやすく熱に弱い性質を持っているので調理方法には注意が必要です。

オメガ3系脂肪酸は腸内環境にも良い影響を与えてくれます。
積極的に摂取をして腸内環境を整えましょう。